約 4,409,970 件
https://w.atwiki.jp/usbportable/pages/43.html
Portable Firefox プラグインで拡張可能なブラウザ (98/Me/NT4/2000/XP/2003) Webブラウザ 2chブラウザ 公式サイト 拡張 bbs2chreader Mozilla/Mozilla Firefox の拡張機能として動作する XUL で作成された 2ch ブラウザ 公式サイト Flashが導入されていないマシンで再生させる WINDOWS\system32\Macromed\Flash\flashplayer.xpt WINDOWS\system32\Macromed\Flash\NPSWF32.dll の2つのファイルを Firefox Portable\フォルダ以下のData\plugins\にコピー。 またはFirefox Portable用のプラグインを導入する Mozilla Firefox, Portable Edition Support
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/131.html
アークセイバー サイズフォームから放つ光の刃。PT事件の際から多用していた魔法だが、その後の訓練により速度と自動誘導性能はさらに高まっている。 バリアを「噛む」性能があるため、受け流しは困難。 対人戦では直接命中させることより、飛翔させることで相手の自由な機動の阻害や、防御させることで足止めを狙った技と言える。 フォトンランサー フェイトの射撃魔法。電光を纏って高速飛翔する直射弾で、鋭く圧縮された弾丸は槍のような鋭さを持つ。 ディフェンサー フェイト・バルディッシュの防御魔法。膜状のバリアで対象の攻撃を防ぐ。 紫電一閃 カートリッジからロードした魔力を刀身に纏わせた状態で叩き斬る、ただそれだけの技だがシグナムの高い魔力運用能力と剣技、 レヴァンティンの強固な刀身によって圧倒的な威力を誇る。特に対魔導師戦におけるバリア破壊の能力は極めて強力。 なお、シグナムとレヴァンティン両者が保有する魔力資質「魔力の炎熱変換」による炎が追加効果として付与されている。 パンツァーガイスト ミッドチルダ式魔導師のようなオートガードを持たないベルカの騎士が身に纏う、防護フィールド型の防御魔法。 全身に纏うタイプの装身型バリアで、特に魔力攻撃に対して圧倒的な防御力を誇る。 全開出力では砲撃すら防ぐ強力なフィールドを形成できるが、全開での防御持続は魔力消費が極めて大きく、 実戦の戦闘での使用には、極めて高度な魔力運用技術が必要となる。 シュワルベフリーゲン 魔力をこめた鉄球をハンマーで打ち出す、ヴィータの誘導操作弾。 同時4発の発射、さらにフェイトの高速機動を上手く捕捉する、誘導制御の性能・技術の冴えも見せている。 パンツァーヒンダネス 障壁による全方位防御。動きの速いフェイトの攻撃、他にも仲間がいる危険性などを考えての選択と思われる。 防御専念時のヴィータの対物理・対魔力総合の防御力は、将であるシグナムをも凌ぐ。 フェアーテ 直線加速力に優れるヴィータだが、それをさらに加速する風の魔法。魔法名は「騎乗」の意で、ベルカでは移動・加速に関する魔法にこの名が与えられることが多い。 フィジカルヒール 対象の肉体的負傷を癒す魔法。即効性の効果がある。 ラウンドガーダー・エクステンド 外敵や攻撃に対して強靭な防御力を誇る結界、ラウンドガーダーに結界内にいる者の肉体・魔力の回復治療の効果を付与した、高位結界魔法。 トランスポーター・ハイ 別々の場所にいる複数の人や物を同時に同じ場所に運ぶ、高位転送魔法。 バリアブレイク 拳にバリア破壊のプログラムを乗せ、対象が張ったバリアを破壊する。 生成したバリアを完全に破壊されるのは術者にとって大きな魔力消耗となるため厄介であり、アルフにとっては生じた隙をフェイトに狙わせるための攻撃手段でもある。 リングバインド バインド系の基本魔法。発生させたリングで捕らえた相手をその場に固定、動きを止める。 単体での固定力はさほど強力ではないが、起動が早く、複数同時発動や遅延発生など応用も利きやすいため、サポートに回る魔導師や使い魔には愛用者が多い。 遠隔通話 主と守護騎士の間柄であるはやてとシャマルは思念通話での会話もできるが、あくまで一般人であるはやての生活に合わせ、 シャマルはクラールヴィントからの通信をはやての携帯電話に飛ばしている。 なお、シャマルははやてに携帯を持たされており、平時はそれで連絡をしているのだが今回は家に忘れてきてしまったようである。 旅の鏡 シャマルの特殊魔法で、空間を繋ぐ「鏡」による転移魔法の一種。 転移魔法は、通常自分のいる場所から別の場所に自分や物品を移動させるが、これは特定の品物を「取り寄せ」するために使用する魔法。 本来は攻撃魔法ではなく、防護服や魔力防御が正常に機能している相手の体内に侵入することは困難だが今回なのはは防護服を破壊され、 さらに疲弊状態での大魔法発動という極めて無防備な一瞬があり、シャマルはその瞬間を狙って発動させている。 スターライトブレイカー+ 周辺の魔力を集めて巨大な砲撃を放つ、収束型砲撃魔法。なのは最大の攻撃魔法であり、かつてライバルだった時代のフェイトを倒すのに使用した。 その後半年あまりの訓練でさらなる強化がなされ、約10秒のチャージタイムと引き替えに威力と射程の増加、結界破壊の効果を得ている。
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/190.html
表紙の折り返しコメント 藤真拓哉 この度は、「魔法少女リリカルなのはvivid」第2巻を購入していただきましてありがとうございます。 4期シリーズとして始まった「リリカルなのはVivid」、皆様の応援のおかげで2巻も無事出すことが出来ました。 これからもよろしくお願いします! この2巻からはオフトレ編がスタート、3日間の様々な出来事の中でヴィヴィオとアインハルトの2人がどのように成長していくのか、注目です。 またこの巻から出てくる《新技》も楽しんでいただけたら嬉しいです^^ それでは本編をお楽しみください!「魔法少女リリカルなのはVivid」第2巻はじまります。 都筑真紀 無闇に作家歴が長い分、すでに相当な数の「主人公」を生み出しているはずの自分ですが、 ヴィヴィオほど明るくて屈託ゼロな主人公って初めてだな、って事に、ついさっき気がつきました。 そんなヴィヴィオは今後も曲がる事なく、リリカルでマジカルにがんばっていく予定です。 帯の武内崇のコメント 可愛いはもちろん正義。だけど、正しいだけでは勝てない戦いがある!可愛く、しなやかで頼もしい!これが最先端の熱血魔法少女活劇!! 長谷川光司のあとがきコメント コロナいーですよね。 いよいよ2巻ですねぇ。すっきりした線と柔らかい質感が大好きです。この先の展開も楽しみにしてますですよ。 長谷川光司先生から応援コメントをいただきました。 あとがき 2巻です。合宿編です。 相変わらずゆるっとまったり、時々懸命路線で進んでいっております。ところで制作秘話というか、ViVidのもう一人の主人公、アインハルトが生まれたいきさつとか。 娘TYPE誌上での「Force」は新規主人公で「重大事件」を描くストーリーとして、コンプエース誌上の「ViVid」はヴィヴィオが主人公であんまり重くならない話。 ここまではあっという間に決まったのですが、実は一番最初の企画段階では「スポーツ格闘」のラインはまだ存在しておらず、 「ヴィヴィオメインの学園&ホームコメディもの、時々事件」くらいの方向性で考えていました。 そんな叩き台状態で組んだストーリープロットは、まだ格闘技やスポーツの要素はそれほどなく、 ヒロイン役として置いていたキャラも、「無口系で受け身型で謎多きヒロインだけど、実は戦闘力が高くて、 主人公(ヴィヴィオ)と闘う事になる」というくらいしか決まっておらず、かなりふんわりしていました。 でも、そんな叩き台状態のストーリープロットを見てくれた藤真先生が、初回打ち合わせの時に「ちょっと描いてきてみました」 と見せてくれた「少女」が今のアインハルトでした。 頂いたその「少女」の絵からはすぐに今の設定や「ViVid」が目指す作品ジャンルやストーリーラインが出来上がっていって なんだかかなりあっという間に今の「覇王っ子」アインハルト・ストラトスが完成しました。 2巻では大分、素の天然度合いも披露されてきてヴィヴィオとの会話やかけあいは、書いていてとても楽しいです。 そして成長過程まっさかりのヴィヴィオや生まれたてのクリスはもちろんとして、アインハルトも「作中で育っていく子」だったりします。 過去と向き合ったり、前を向いたり上を見上げたりしながらヴィヴィオやリオコロ・周りの大人達と一緒にアインハルトも日々育っていきます。 のんびり見守っていっていただけたら嬉しいです。 都筑真紀 追記…いろんな人に「いったい何があったの?」と心配(?)されたルーテシアですが 特に何もありません。もともとこんな子です。 アギトあたりに言わせると「性格変わった」という印象すらないらしいです。「そういえば声が大きくなったかな」くらいで。 藤真です。「魔法少女リリカルなのはViVid」1巻の発売から半年、ついに2巻が発売になりました!! これもたくさんの応援をしてくれているみなさんのおかげです。 ツイッター、ミクシィ、ブログ、はがき、とても暖かいコメントを本当に、本当にありがとうございます! いっぱいの元気を頂いていますよ!! さて、この2巻からはオフトレ編スタート!ということでたくさんのキャラが登場し、ますます賑やかになって来ました。 ついにヴィヴィオの友達、リオ、コロナもバリアジャケット姿をお披露目。 次巻ではヴィヴィオ、アインハルトとともになのはやフェイトにどう立ち向かっていくのか、ますます 白熱するバトル 合宿を楽しんでいただければと思います(笑)! たくさんのキャラといえば少し前、都筑先生に、「ViVid 好きに書いちゃってますが作業量とか大丈夫ですか?」とおっしゃて頂きました。もちろん大丈夫です!! 藤真も全力全開で楽しく描かせていただいてますよ!だって「せーの!」で12人全員変身ですよ! 藤真のテンションも上がるというものです(笑)。これからもテンションアップでがんばりますっ!! そして3巻ではなんと、限定版が出ます!「ヴィヴィオのねんどろいどぷち」が付きます! 祝!ヴィヴィオ初ですよ!!この本が発売している頃には予約が始まっていることと思いますので こちらのほうも合わせてよろしくお願いしますね! では、また3巻でお会いしましょー! 2010.06 藤真 拓哉
https://w.atwiki.jp/adx992/pages/16.html
「リリカルパーティIV」で流れたムービーで判明したこと システム・キャラクターについて 基本システム・キャラクターのモデルなどは前作と同じ 技演出がより派手になり、一部の技ではカットイン演出が入るようになった。フルドライブバースト発動時にはキャラクターの顔アップのウインドウ型カットイン、攻撃相殺時には両者のバストアップのカットインが入る。 前作には無かった新しい背景が複数見られた なのは・フェイト・はやてそれぞれに新技が設定された。 フェイトは戦闘中にソニックフォームに換装できるようになった。移動・攻撃速度の向上と、近接攻撃ではザンバーを使用した技などが見られた。 アミティエ・キリエについて アミティエ・キリエの2人は、リリカルパーティのムービー時点では名前は非公開。短い戦闘ムービーで 「青い服に赤毛の少女」「ピンク髪のピンク服の少女」であること 二丁拳銃らしき銃器で射撃していたこと クロスレンジでは回転斬りのような技を繰り出していたこと……などが垣間見えた。 2人の紹介パートでは、2人の魔法陣――これまでのシリーズにない形状で、時計の文字盤のようなデザイン――の映像や、「時計のカチコチ音」などの演出があり、キャッチコピーと合わせて「時間」が本作のキーワードとなる可能性を感じさせた。
https://w.atwiki.jp/mediachamp/pages/72.html
GIMP Portable フォトレタッチソフト (2000/XP/Vista) 画像編集 公式サイト (マルチリンガル) ヘルプ (邦訳)
https://w.atwiki.jp/lilia/pages/392.html
前作よりも2倍近くキャラが増え、トレーニングモード搭載、コスチュームチェンジも出来る様になり、CPU強化もされたが、 アーケードでコンティニューするか聞かれる時に、前作では操作キャラが表示されていたが、 今作ではコンティニュー画面がストーリーモードしかなく、最初に映るのがキャラの背後と変わったりした。 しかし今作ではトレーニングモードでロックオンサークルみたいな物が少し邪魔だが、バインドされた状態を見やすくなった。 ちなみに時間は99秒99で固定らしい ちなみにストーリーモードのコンティニュー画面はタイムアップ敗北とKO敗北でキャラの姿勢が変わる が 上記の通り時間は99秒99で固定なのでタイムアップ敗北時の姿勢を見るのに多少時間がかかるのが残念
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3164.html
私にしか出来ない私の戦いをしろ、そう彼女は言ってくれた。 確かに、此処には既に自分の居場所などないのかもしれない。否、元より異邦人でしかなかった自分には最初から居場所など存在していなかったのだろう。 だからこそ、この大地の上においてはもはや自分は無力な存在でしかなく、何の役にすらも立つことができない。 無理に我が儘を通そうとしても、それは決して自分勝手なことでしかなく良い結果すらも生むことはあるまい。 ……ああ、分かっている。それくらいのことは自分だって分かっていた。 けれど、それでも彼女―――桐生水守にはまだどうしても帰るわけにはいかない理由があった。 まだどうしても逢いたい人が居た。そして伝えねばならないことがあった。 クーガーは言ってくれた。自分はただ社会の歪みを垣間見ただけに過ぎないと。 ジグマールは示してきた。真実を知ったところで無力な自分に出来る事など何もないと。 なのはは教えてくれた。それでもまだ自分には戦える道はあると。 そのどれもが水守にしては受け入れねばならない事実であると同時に、他者から示された与えられた道でしかなかった。 その道を歩むことに抵抗感があった……納得のいかぬ思いがあったからこそ、その理由もあるだろう。 だが水守にとって大切だったのは、結局それらを示された後に気づいたたった一つのことでしかなかった。 何も出来ず、心の道筋すら見つけられなかった自分。 だがそれでも……元より此処に来た理由はそんなものではなかったはずだ。 真実を知る為に、この大地に自分は舞い戻ったのではない。 事実を知った自分がどう行動するか……それが問題だったはずだ。 それこそが桐生水守の行動原理。 かつてロストグラウンドに舞い戻って直面した現実に戸惑いや反感、納得できない思いを抱き真実を知ることに走ったように。 ならばその真実を知ってしまった自分が、次に何を選び、どんな行動に移るかだ。 己の思いと正直に向き合い、散々に迷い、けれど結局は捨て切れない思いがソレを決めた。 これは本当ならば裏切りになってしまうのだろう。危険を冒してまで、それでも自分を助けようとしてくれた、この大地で出来た新しい友達への。 心が痛む、申し訳ないという思いで一杯になる。 けれど、結局彼女はこの道を選んだ。 きっと、今この道を選ばないと自分はこれから先も正直になれない。自分自身にずっと嘘を吐き続けて、己の思いそのものから逃げ続けなければならなくなると思ったから。 だから、後悔をしたくないからこそ桐生水守は選択した。 それがきっと例えようもないほどに傍迷惑で馬鹿らしい、そんな我が儘だという事を承知の上で……… そして桐生水守は此処にいた。未だ、このロストグラウンドの大地の上に。 あれから本土行きの飛行機には結局乗らず、なのはやクーガーに気づかれないようにこっそりと空港から出た水守は、その足で市街を脱出した。 なのはたちには迷惑をかけられない、そしてホーリーのお膝元である市街は危険だ。 そんな考えから、水守は単身荒野を彷徨い続けた。 当てがあったわけではない。それでも目的と逢いたい人物がいた。 その人物に逢う……きっと未だ荒野側の何処かにいるはずだ、そんな考えで水守は彼―――劉鳳を探して歩き続けた。 だがやはり自分の行動がいかに無謀であったかは、荒野を歩き続けて直ぐに水守自身にも痛いほどに自覚できた。 何せ目的の人物である劉鳳が何処に居るかも分からない。加えて、人の足……ましてや非力な小娘でしかない自分が歩き回るにはこの大地はあまりにも広い。 結局、何処とも分からぬ廃墟街へといつの間にか迷い込んでいた水守は、歩き通しであり蓄積された疲労も相まってか、足元の出っ張りに気づかずにそれに躓き転んでしまっていた。 転んだ拍子に足に怪我を負ったのか、苦痛の表情を浮かべながら膝を抱えて蹲る水守。正直、合わさった疲労もあり体はこれ以上の立ち上がっての行軍に拒否をありありと示していた。 だがそれでも、自分は行かなければならない。使命感とは別種の強い思いを糧としながら水守は体に鞭打ち立ち上がる。 逢わなければ、劉鳳に逢わなければ………。 そんな想いを必死に心の支えとして、水守は再び歩き始めようとした……まさに、そんな瞬間だった。 直ぐ近くから聞こえてくる物音、そして下卑た笑い声。 振り向けば、そこには如何にも柄の悪そうなインナーが三人、こちらを獲物とでも見るような視線を向けてきていた。 荒野側の、それも彼らのような若いインナーがどれ程危険な存在かは、水守も知識としては知っていた。 だが実際に、それがどれだけの危険なことであるかを本能的に水守は此処で初めて察することとなる。 「そんな嫌そうな顔するなよ。何もしやしねえって」 真ん中のリーダー格の男が水守に対してそんな言葉を発してくる。当然、相手の雰囲気や態度から見ても到底信用できる言葉ではない。 むしろ、水守やなのはのような人種には到底理解しがたいことだが、信じるなどという行為は馬鹿を見るという結果しか生まないという風潮が、この荒野側の若いインナー間の間にはある。 「ただ……ちょっと経済的援助って奴をお願いできないかなと思ってねえ」 要するに、身包み含めた金目のものを全て置いて行け……そうこのインナーたちは言ってきているのだ。 無論、水守にとってそんな要求など呑める筈が無い。身の危険を感じ取ったという理由も合わさって、痛む足を無理矢理に動かしながら追剥たちから逃げようと走り出す。 だが直ぐに捕まり、瓦礫を背にした逃げ場の無い壁際まで追い詰められる。 元より非力な娘でしかない水守では、悪漢たちを相手に逃げられるはずも無い。 「こんなところでこんな拾い物をするとは思わなかったな」 「しかもかなりの上玉だよ」 売り飛ばせば高く売れる、そんな品定めをするかのような追剥たちから下卑た視線を受け水守の背筋には悪寒が走っていた。 劉鳳に逢わなければならないというにの、こんなところでこんな連中に捕まるわけにはいかない。 そんな思いを最後の抵抗とするように隙を見て、相手の横合いをすり抜けようと駆け出す。 ……が、それもやはり失敗。あっさりと捕まり体を拘束される。 悲鳴を上げながら激しい抵抗を示す水守だが、下卑た視線と笑いを示してくる追剥たちからは逃げられるはずもない。 「嫌ぁ! 離して! 離してッ!」 それでも必死になって抵抗をし続ける水守だったが―――唐突に、その自分の言葉通りいきなり離されその勢いで地面へと膝をついていた。 自分自身で必死に抵抗し、叫び上げていたとはいえまさか連中がそれを聞き入れるなどとは思っていなかったため、暫し呆然としながら水守はインナーたちを見上げた。 その水守の目に映ったのは直立した視線を維持したまま虚ろな表情を浮かべているインナーたちの姿。 奇異なその姿にそれ以上に驚いた理由が彼女にはあった。それは――― 「女性一人でこんな場所をうろつくなんて……」 そんな声が突如この場へと響いてくる。 その間にインナーたちはしっかりとした足取りでこの場を去っていく。……その額に緑色の光玉を張り付かせながら。 インナーたちが去っていくのとほぼ同時、瓦礫の影から現れ姿を見せる人物が一人。 水守を呆れたような、それ以上に無謀な行動に対して非難を示すような視線をハッキリと見せながらその人物は口を開く。 「……貴方は………」 呆然と彼を見上げ返す水守に応えるように。 「いったい何を考えているんですか、貴女は?」 橘あすかは説教でもするような厳しい態度でそう言ってきた。 ……クソッ、奴ら疲れってものを知らねえのか? そんな苛立たしげな舌打ちを突きながら、逃げるこちらに併走してくるダースたちをカズマは睨みつける。 相手の驚異的なそのしつこさもそうだが、戦い続けていてそれ以上に腑に落ちない奇妙なことがカズマにはあった。 (こんなに何度も技を使ってりゃあ、普通能力が落ちるはずだってのにッ!) アルター能力とて何も無限の力というわけでは無い。 人間が扱う能力であるからこそ、やはり体力や精神力の消費というのは避けられない。人間走り続ければ誰だって疲れる、それと同じようにアルター能力とて酷使を続ければ絶対に無視できない疲労が溜まるものだ。 強力な能力であればある程、それは比例するかのように明らか。経験者ゆえに誰よりもカズマがそれをよく知っている。 だというのに、こいつ等は何だ? 物理攻撃を無効化するように体の構成そのものを霧状に変える……カズマにとっては最も相性が悪いと言っても良い能力だ。 だが何度も使っていれば、普通この手の強力な能力は使用に限界が来るなり、霧状になるその速度だって極端に落ちるはずなのだ。 だというのに、併走してこちらを追い詰めてくるその体力とも合わさって、霧状になる速度が落ちるどころか、能力そのものの疲労を垣間見せもしない。 本当にこいつら人間か、そんな薄気味悪さをしつこく追い続けてくる苛立ちと相まってカズマが抱いたとしても無理は無かった。 走り続けていた先が急斜面になっていることに気づき、カズマは飛び降りるかのように宙へと身を舞い上げる。 だが其処を突く様に、空中で蹴り飛ばされ、何とか上手く着地するのと同時に追撃で再び蹴り飛ばされる。 徹底した連撃のコンビネーション、地味に効いてきているその攻撃もまたカズマにとっては実に不満であり厄介だった。 NP3228を着実に追い詰めていく黒ダース部隊。 “絶対知覚”を用いて彼らを指揮する管制役となりながら、イーリィヤンは確実に包囲網を完成させていっていることに満足気に頷く。 「そろそろ、かな……」 全ては順調、計画通りにカズマは追い詰められ始めていた。 拘束された君島達は車を没収され、ホールドの装甲車へと乗せられ、牧場の人々が集められた場所にまで連行させられた。 いかつい装甲車の中から銃を突きつけられて出てきた君島達は住民たちの視線を一身に浴びる存在ともなっていた。 牧場においての人気者、大人たちの好意を向けられる象徴であったかなみが傍らに居たのだからそれも尚更だった。 「あら、かなみちゃん」 「……何だ、あのチンピラも一緒か」 基本的に君島はカズマとつるんでいることと相まってか、牧場の人間たちからの受けはカズマと同様にあまり宜しくない。君島自身とて彼らとは余り交流を持っていないのだからそれも当然ではあるが。 「NP3228の共犯者を連行しました。……はい、主犯はまだホーリー部隊と戦闘中のようで」 無線機に向かって報告を告げているホールド隊員のその言葉に、住民たちはざわめき出す。 共犯者……明らかに聞くには宜しくない不穏な単語に住民たちの君島へと向ける視線は不審と非難が籠もったものへとなっていく。 「……結局こうなっちまうのか、俺たち」 悔しげに呟く君島の胸中は無力感と後悔に満たされたものとなっていた。 相棒との約束も守れず、かなみまでホールドに捕らわれてしまったのだ。それも尚更と言うものだろう。 だがかなみが不安気な視線でこちらを見上げている事に君島は気づいた。 ……この子を心配させるわけにはいかねえだろ。いくら役立たずのヘタレとはいえ、小さな女の子一人の不安も払拭できずに何が男か。 男の子としての意地と矜持、それを必死に支えとしながら、 「心配すんなって」 俺が付いてるから、そうかなみを安心させるように微笑みながら優しく告げる。 そう、せめて自分がどうなろうともこの少女だけは護る。絶対に、だ。 だから、カズマ……お前だけでも――― (―――せめて、お前だけでも逃げ延びてくれ) それが君島が現状で唯一抱ける希望であり、願いであった。 「……本当は合法的とは言えないんですが、僕は訳あって市街と荒野を繋ぐブローカーの手伝いをしているんです。ホーリー隊員でないアルター使いにはこんな仕事しかありませんからね」 「……そう、ですか」 まだ駆け出しですけどね、そんな苦笑を浮かべながら紙コップに入れてくれた水をこちらへと差し出してくれる橘あすかに水守は恐縮しながらもそれを受け取る。 あの場で橘に助けられた後、水守は彼に連れられ彼の事務所へとやって来ていた。 ホーリーを脱退したとは聞いていたし、顔見知りであり任務も同行したこともあるが水守は橘とはそれ程親しくもなければ、彼の事をよく知っているわけでもない。 それでも何処か以前と比べても雰囲気が変わった今の彼は、多少の戸惑いを覚えるのと同時にどこか安心できる存在でもあるかのようだった。 言い方は悪いかもしれないが、水守の目から見ても以前の橘は典型的なホーリー隊員でもあり、あまり好感を持てる相手でも無かった。 自身のアルター能力を誇り、ある種の傲慢さをもってインナーを野蛮と見下す……そんな節が態度のそこかしこにあったはずの彼だが今はそうでは無い。 物腰の穏やかさは相変わらずであり、若気による血気盛んさもクールさで隠しているようだが同様だろう。 しかし精神的に何がしかの変化を経たのか、まるで今までの憑き物が落ちたと言わんばかりの清々しさのようなものを彼は発していた。 或いは彼も得たのかもしれない。ホーリーを辞めることによって、自身の中での確固とした答というものを……。 「それより桐生さんは何故一人であんなところに?」 「……それは………」 橘の当然とも言えるその疑問に水守は返答に言葉を詰まらせる。 本土の令嬢が、あんな治安の悪い場所でたった一人で行動する。未だ自分をホーリーに所属していると思っているのだろう橘の眼から見れば、それこそ正気の沙汰とも思えなかったのだろう。 だからこそ、水守もまた戸惑っていた。はたして彼に詳しい説明をしてもいいのかどうかを。 下手をしたら、それこそホーリーから解放された彼を再び巻き込むことになるかもしれない。そんな不安と後ろめたさが水守に言葉を告げる事を躊躇わさせていた。 橘もまた水守のその様子から何がしかの事情を察したのだろう、無理に追求してこようとはせずただ黙ってこちらが次に言葉を口にするのを待ってくれていた。 あまり好ましくない類の沈黙が橘の事務所内を満たしていた……そんな時だった。 『―――番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』 点けたままBGM代わりとなっていたあまり映りの宜しくないテレビからそんな言葉が流れてきたのは。 水守と橘、そのどちらもの視線がテレビに向かって集中する。 テレビの映像は映されていたキャスターから、煙が立ち込めている丘の光景へと移り変わっていた。 『当テレビ局のスタッフが、ネイティブアルターと特殊任務用警察部隊『HOLY』との戦闘映像を入手しました』 いったいどういうことだと目を見張る二人とは対照的にキャスターは興奮した様子で説明を続けている。 『ご覧下さい、この映像を。これは信じられないことに一人のネイティブアルターによって引き起こされた事態なのです』 切り替わる映像、燃え上がる牧場、破壊されつくした悲惨な光景の数々。 『犯人は彼です! この少年です!』 キャスターの捲し立てる言葉と同時に、映像は次に一人の男の姿を映し出していた。 水守にしても橘にしても、その驚きは並大抵のものではなかった。 それも当然か、彼らにとってその男はよく知っている人物だったのだから。 NP3228……カズマという名の男の顔がテレビの向こうではでかでかと映し出されていた。 「―――カズくん!?」 かなみがその名を叫びながら駆け出すようにカズマが映し出されたモニターへと近付いていく。 己の大切な同居人がいきなり牧場を破壊した犯人扱いで登場したのだ。彼を心の底から慕っている幼い少女にしてみればその衝撃は計り知れない。 それは彼女とは違う意味においても他の連中も同様だった。 「これ、アイツ!?」 「下働きの奴でしょ!?」 「……アルター使いだったのかよッ!?」 激しい動揺や怒り、嫌悪感も顕にしたようにかなみや君島の前であることにも関わらず捲し立てていく大人たち。 誰も彼もが自分たちが築き上げてきたものを台無しにした張本人として、カズマのことを認識し始めていた。 そんなざわめきの中、ただ君島だけが呆然とそのままの場所で立ち尽くしたまま映るモニターを見続けていた。 その報道されているあまりにもな内容に歯噛みしながら…… 「……犯人、だと………?」 ここまで最低最悪のジョークを君島邦彦はかつて一度だって聞いた事は無かった。 「大変だ! 07地区の情報が流れてるぞ!」 「何だって!?」 慌ただしく叫びあいながら駆け回っているホールド隊員の様子を見て、スバルは何事かが起こっている事を確信した。 先程、本隊からの命令を受け単独で帰還していくヴィータを見送っての直後のことである。 エマージーとの一件が部隊内で明るみとなってしまい、たった一人であることとも相まってか何処か肩身の狭い居心地で邪魔にならないところにいようと思っていたスバルだったが只事ではない状況を察し、トレーラーへと即座に向かう。 「どういうことよ!?」 「本土側がビビらないようにアルター使いの情報は流さない規則じゃ無かったのか!?」 トレーラーの中ではまるで口論するように声を荒げ苛立っているシェリスに瓜核、そして明らかに不機嫌な沈黙を保っている劉鳳がいた。 状況が状況なだけに、目の前の信じられないイレギュラーに戸惑っているのかコッソリと覗き込んでいるスバルには気づいていないようだった。 入り口付近から覗き込むように、気づかれないようにしながらスバルは映し出されている映像と情報を即座に確認し、驚愕した。 報道されているニュース番組、そこに映っていたのはあのカズマであった。 それもなんと大規模破壊を行い、ホーリー部隊と交戦しながら未だ逃走中といった内容である。 ホーリーの施設を襲って彼らと戦っている……そうだとするなら、それは今更ながらスバルとしても別に驚くほどのことでもない。 だが彼女が信じられなかったのはカズマが破壊したというその対象だ。 インナーたちが暮らし、働いている農場……そこに惨劇を作り出したのが彼だというのだ。 (……そんな……カズマさんが……そんな事を……?) 到底、スバルには信じられることではなかった。 以前にエマージーの非道にあれ程の怒りを示し、インナーたちを護ろうとしていた彼がインナーを攻撃?……ありえるはずがない。 それに彼には相棒の君島邦彦がいるではないか。インナーを助ける為に必死になって自分と協力してくれた彼が、そんなカズマを止めない筈もない。 これは意図的に改竄された報道……そう自然とスバルが行き着いたとしてもそれはおかしくなかった。 (……違う。あの人は……あの人たちは、インナーを護る為に戦ってるんだ) それだけは絶対に間違ってはいないはず。そしてその為に今ホーリーと彼らが戦っているというのなら……報道された構図はまったくの逆ということになるのではないのか。 そう思い至ったスバルの中に生まれた感情が何であったか正確には彼女自身にも理解できない。 だがそれでも画面の向こうで今尚も苦戦を強いられているカズマの姿を見て、放っておけないという強い欲求が生まれていたのも事実である。 助けたい、彼らを……そうスバルが正直に思ったのは間違いの無いことだった。 けれど、そう思う一方でやはり即座にその行動には移れない楔が彼女に突き立てられていたのも事実だ。 時空管理局機動六課前線部隊スターズ03……スバル・ナカジマ。 己の立場を改めてスバルは見つめ直した。 己に与えられた任務、管理局の一員として背負っているものとその立場。 誰に味方をして、誰を護り、誰を救わねばならないのか…… 痛いほどに理解できているスバルには、どうしてもそれを擲ってしまうかもしれない恐れが一歩を踏み出させようとはしない。 父の顔が姉の顔が、なのはをはじめとした上司たちの顔が、ティアナをはじめとした同僚たちの顔が脳裏に過ぎる。 ……其処に、正義はあるのか? ずっと抱き続けてきた疑問、もう答も思いも出ているのに、あそこに残している者達への想いがスバルを押し留めている。 皆に迷惑はかけられない、かけるわけにはいかない。 正義と仲間への想いを天秤に掛け、まったくの五分であったからこそ揺れ動き迷い、罪悪感が自身の身の内へと突き立っていく。 (……私は、卑怯で弱虫だ) 情けない、そう自分自身でも素直に思う。正直になれず言い訳を探して、嘘で塗り固めた納得の理由で自分自身に言いきかせようとしている。 失うかもしれないことが怖い、大切な人たちに迷惑をかけてしまうかもしれことが恐ろしい。 だから己の信念に、正義にちゃんと向き合えない。 こんなに情けなくて惨めな自分に護れるものなど何も――― 『―――行きましょう、相棒』 唐突に聞こえてきたその声にそれこそ呆然としながら、スバルは己が首から提げていた待機状態のデバイスを見下ろす。 「……マッハ、キャリバー………?」 相棒が告げてきた唐突なその信じられない言葉に、スバルはただ応えるわけでもなく意味を図りかねたようにただただ戸惑う。 だがマッハキャリバーもまたそんなスバルのことを理解しているのだろう、そんな戸惑う彼女を責めるわけでもなくもう一度その言葉を告げる。 『行きましょう、相棒。……あなたは、行きたいのでしょう?』 「で、でも………」 相棒の促がす言葉に即座に乗れるはずもないスバルがそうして躊躇うのは至極当然。そうでなければ単純な相棒がここまで繊細に悩みなどしないだろう。 彼女が皆の事をどれだけ大切に思い、そして護ろうとしているのかはマッハキャリバーにだって良く分かっている。 当然だ、ずっと共にそれを護るために戦い続けてきた文字通りの相棒なのだから。 だがだからこそ、そんなスバルの想いが分かるからこそマッハキャリバーはあえて彼女へとこう告げているのだ。 『以前にも言ったはずですよ? あなたが教えてくれた、わたしが生まれた理由。あなたが憧れる強さ………それを、嘘にしないでください』 嘘は嫌いだったんでしょう? そうマッハキャリバーが告げてくる。 その言葉を聞き、スバルがハッとなったのは言うまでもない。 ……そう、己にとっての原点。かつて憧れ、それを目指したその理由。 ―――スバルは、どうして強くなりたいの? なのはに問われたその言葉に、自分は彼女に、仲間達に、そしてマッハキャリバーにも告げたじゃないか。 災害とか争い事とかそんなどうしようもない状況が起きた時、苦しくて悲しくて助けてって泣いてる人を助ける人になりたいです。自分の力で―――安全な場所まで、一直線に! それがスバル・ナカジマの原点にして願い……否、誓いだ。 四年前、ただ泣く事しかできなかった弱い自分をそれでも助けてくれた……あの強くて優しい白い魔法使いのように。 自分もまた、そんな誰かを助けられる人になりたい。 それがスバル・ナカジマの中で絶対に曲げられない信念―――正義だ。 これだけは……これだけには絶対、嘘を吐けない。 そう誓った、だから――― 「……ありがとう、マッハキャリバー」 『……いえ、わたしの方こそ無茶を言ってしまいました』 マッハキャリバーが言ってくるその言葉に、そうだねと苦笑を浮かべながらもそれでも間違ってはいないと思っている。 無茶はいけない……高町なのはのその教え、本当に大事で遵守する必要のある約束。 ごめんなさい、そう胸中でなのはへと謝りながら自分が禁を犯そうとしていることをスバルはハッキリと自覚し、そして受け止めた。 怒ったなのはは怖い。それはもう本当に、まさに悪魔も泣きだすと言わんばかりの悪魔的な怖さだ。 それが後で自分に向かって容赦なく来るであろう事を覚悟し、その時は逃げずに受け入れようと覚悟を決めた。 不器用な自分ではそうやって一々に間違えて、怒られて、立ち止まって、また歩き出す。 そんなことしか出来ない。だがそれでも良いと思う。むしろその方が自分らしくて好きだ。 少なくとも、嘘を吐かずに、騙さずに、後悔せずにすむ。 ならばその方がずっと良い。 だから――― 「―――行こうか、相棒」 『All light Bady.』 トレーラーより気づかれぬようにこっそりと離れ、マッハキャリバーを起動する。 お馴染みのバリアジャケットを身に纏い、そしてリボルバーナックルをしっかりと握りこみ、ローラーブーツの相棒の調子を確かめながら、彼女は真っ直ぐに前を見る。 今は前を……ただ前だけを見て、後ろは振り向かずに駆け抜けよう。 「行くよ、マッハキャリバー!」 最後に相棒の名を決意の形として叫びながら、スバル・ナカジマは駆け出した。 己の信念を一直線に、全力全開に、そして最速で貫く為に――― 「……どういうことだ、イーリィヤン!? これでは本土が介入してくる!」 ドンッと苛立たしげに机に拳を叩き下ろしながら、ジグマールは現在進行形で報道されている映像と、その現状についてモニターの向こうの腹心へと問い直す。 「……分かんない、誰かが勝手に」 画面の向こうでジグマールから恫喝に近い勢いの声音で迫られ、流石のイーリィヤンも現状の不可解さと合わせて戸惑いも顕にしていた。 明らかにホーリーの管轄化であるはずのホーリーアイを仲介しての映像の流出……このようなことイーリィヤンがいる限りは絶対にありえない。 だが絶対にありえないはずのことが現実に起きている。それもジグマールにとっても予期しない非常に不都合な状況で、だ。 チラリと映されている報道映像を先程から食い入るように見つめている高町なのはへと視線を向ける。 そもそも彼女との……否、彼女の魔法の杖とやらと腹の探り合いをし牽制し合っていた最中にこの事態だ。さしもの急展開に今は責任の所存すら問い合わせる暇すらも無い。 何故なら問題の報道……こんなことをされては本土側の介入というジグマールが望まぬ横槍を受ける可能性が非常に高いからだ。 高町なのはが本土側であるのもそうだが、ロストグラウンド内でのホーリーの優位性を覆すような事態に陥ることだけは絶対に避けねばならない。 ……これは彼女の、否、彼女の背後に居る者たちの仕業か? 邪推や疑心暗鬼としてではなく、この地へ直接的介入を招ける口実作りのために本土側がこのような蛮行を行ったとしかジグマールには思えなかった。 ふざけるな、そんな苛立ちを歯噛みとして出したいのを必死に抑える。ただでさえこちらの思惑を揺るがすあちらの尖兵たる小娘どもだけでも手を焼いているというのにこれ以上のイレギュラーを招きこんでたまるか。 何としても映像の流出と放送を阻止するようにイーリィヤンに命じる。ここが自分たちにとっての正念場となりかけていることをジグマールは悟っていた。 だが負けない……絶対に負けるわけになどいかない。この高町なのはにも、本土にも、このロストグラウンドを好きになどさせない。 この大地の守護者としての自負がマーティン・ジグマールに確固として存在し続ける限りは。 「……いったいこれはどういうことなんですか?」 報道映像に映し出されダース部隊を相手に孤軍奮闘を続ける男……カズマを確認し、なのはは愕然としながらジグマールへと説明を求める。 「……私に問われても困る。これは私の与り知らぬところで起こっている事態だ」 『ですがそれはこの報道のみでしょう。このダース部隊が何故彼と戦っているかは貴方とて知っているはずですが』 すかさず問い質してくるレイジングハート。それもそうだろう、報道自体はジグマールにとっても予期せぬイレギュラーであれ、彼が統括している部隊員たちの方は彼の命令で動いているはずなのだから。 故に言い逃れはさせないとレイジングハートは言外にて迫る。 ジグマールとてそれは理解しているのだろう。道具風情の小賢しい喰いつきにやはり隠してはいるものの相当な苛立ちを押さえ込んでいるのは明らかだった。 「……確かに、彼らは現在私が下した任務を遂行している最中だ」 「……それがカズ……いえ、NP3228と交戦することだと?」 ジグマールが告げてきた言葉になのははそう問い直す。 彼女の問いにジグマールはそうだと頷いた。 「何故ですか? 確かに彼は色々と問題があり敵対的行動をこれまでにも何度か取ってきました。けれど、それはこちら側にも非があったのも確かで―――」 「君は、余程甘い世界で生きてきたらしいな」 なのはの口上を遮るようにジグマールはいきなりにそんなことを言ってくる。その言われた言葉の意味を訝しむような表情を見せるなのはに対しても、向けてくるジグマールの視線は厳しいものだった。 「やはり君は……いや、桐生水守を含めて君たちは何も分かってなどいない」 ジグマールが静かな怒りを込めながら言ってくるその言葉、そして彼の放つ雰囲気に彼女は戸惑う。 今までのジグマールとは明らかに異なる何かが、今の彼にはあった。 「やはり君たちは所詮余所者。高らかに綺麗事を謳うのは立派だが正直何も分かっていない。青臭い理想論と手前勝手な価値観で物事の全体を見ようともしていない」 そんな君たちに“こちら側”などという言葉は正直使って欲しくは無い、そう明らかな苛立ちを示しながらジグマールはなのはを不愉快気に睨みつける。 己がジグマールの逆鱗に触れてしまったことに気づいたなのはだが、さりとて言われたい放題のままで終わるわけにもいかない。 「……私の発言が失言だったというのなら謝罪はします。ですが、私自身も間違っているとは思ってはいません。明らかに今のホーリーや本土のやり方が、このロストグラウンドに住む人々のためになるやり方だとは認められません」 そう、認められるはずが無い。無法の大地だからとはいえ、暴力を持って相手を平伏させ、明らかな貧富の差も顕な格差を生み出し、挙句の果てには人間を実験動物のように扱うようなこと、高町なのはは絶対に認めない。 「君も本土側の人間だろうに。だというのに、己が所属する組織を非難するのかね?」 「私は本土側の人間ではありません。時空管理局の魔導師です。これはジグマール隊長もご存知のはずでしょう」 「……そうだったな。だがどちらにしろ同じことだ。その時空管理局が本土と同じ側に立っている限り、君もまた組織人の一人としてそこに組み込まれている……違うかね?」 ……違う、とは流石に言えない。管理局と本土が協定を結んでいる限りはどのような言い方をしようが機動六課自体もまた本土の尖兵。歴然とした事実の形として今があるのは否定できない。 故にこそ、確かに自分もまたその人道に反している側に所属する人間なのだろう。 だがそれならば――― 「―――だったら、私が変えます」 はっきりとジグマールは見据えながら高町なのははそう告げる。 相手からすれば意外な言葉だったのだろう、ジグマールもまたなのはが何を言いだすのかと目を丸めて驚いていた。 だがそれに気にした様子も無く、なのはは毅然とした態度のままに続ける。 「私は真実を知りました。……そしてその真実を許せないとも思いました。だから、真実を知った者の責務として、そこに所属している者の責任として、私はその真実の中の不正を正す」 それが高町なのはが決めた戦い。 本土の側に非があり、それが許されないものだというのなら、それ自体を正す。組織人として組織をあるべき正しさに自分の手で戻す。 それが真実を知った者として、そしてその組織の一員でありながら許せないと思ってしまった自分がやらねばならないことだ。 誰の為でもない、命じられた任務ですらない。 高町なのはが自分で決め、自分で選んだ戦いだ。 「……陳腐で青臭い、実現性すらも乏しい夢物語だな。君が個人としては破格の強さを有していることは認めよう。……だが、強大な組織という壁を敵に回し、本当にそれを乗り越えることが可能だとでも?」 あまりにもナンセンスであり、度し難いまでの独り善がり。そして現実の前に敗北することは明らかな愚者の極みたる選択だ。 今日日、狂人でもない限り自ら進んでこんな修羅道を歩もうなどとも思うまい。 明らかに目障りでうざったい、そんな小娘の我が儘だ。 そう酷評するジグマールにすら、彼女はただ静かに笑った。 とても穏やかで、そしてそうでありながらふてぶてしいまでに不敵な。 それは―――反逆の笑みだった。 「出来る出来ないが問題じゃないんです。ただ私はこうと決めた、だからやる……ただ、それだけのことです。そしてやるからには―――壁を乗り越える、それだけです」 はっきりとそれは宣戦布告として突きつけられた言葉だった。 実に強固で曲がらない、そして強靭なまでに真っ直ぐな愚直な決意にして正義感。 天使のような笑みを浮かべるかとも思えば、その本質は対極……まさに悪魔とでも言ったところだろうか。 だがそれに一瞬でも気圧された。歴戦の老獪たる己が、だ。 決して青臭い正義感に感化されたわけでもないというのに、無様な姿を曝してしまったようだ。 ならば……些かに悔しいが認めよう。 たった一度の、小娘を相手にした無様な己の敗北を。 「……よかろう、今回は君の勝ちだ。ビギナーズラックの手向け代わりに君の勝利を認めよう」 今回の一件流石に不問にまでは出来ない……が、手心を加え処罰を緩めることも視野に考えているジグマールがいた。 そうは言っても今更管理局に抗議を示したところで、この完全に開き直った彼女を相手には意味も無いことか、そう思い直し苦笑が浮かんでくる。 「お礼は言いませんよ」 「要らんよ、そんなもの端から期待してなどいない」 それにジグマールにも彼なりの思惑があったのも確かだ。 確かに自分とホーリーという組織は事実上の本土の犬……これは否定の出来ない事実。 がマーティン・ジグマールは決して本土側に心まで捧げた忠犬ではない。彼の最終的思惑は必ずしも本土側とは重ならない。 本土への叛意とほぼ考えて良い態度を示している高町なのは。彼女は状況次第ではまだ利用できる価値が残っていた。 ジグマールとてロストグラウンドとそこに住む人々を護りたい……これだけは絶対に変えられぬ最終目的である。 ただ彼女の夢想には付き合えないだけ……だが彼女が場を乱すように踊ってくれれば存外に漁夫の利を得られる可能性とて低くは無い。 それに彼女ならばもしかしたら……いや、そこまでの期待を抱くのは高望みだ。 せいぜい彼女には上手く踊ってもらおう、こちらの目的を確実に達成する為に。 そう、これは慈悲や情けなどというものではない。あくまでも先を見越し精々己が有利になる舞台を作るためのいわば布石だ。 ……そう己へとジグマールは今回の一件に対して結論付けることとした。 だからもう下がってくれて結構だ、そうジグマール的には彼女を追い払い山積みの問題事へとそろそろ移りたかった。 だが退室を促がしているにも関わらず、なのはは一向に退室する気配を見せない。 「……まだ何か?」 こちらとしては話し合うことは全て話し尽くしその結果も見えた。これから具体的にどうなっていくかは未だ不鮮明ではあるが、兎に角、もはや彼女と手を取り合うこともあるまい。 護ろうとするもの、護りたいもの、その対象や目的が同じであったとしても、その達成の為に歩む道が致命的なまでに食い違う以上は道は決して交わらない。 少なくとも、ジグマールは既にそのように判断していた。 しかし――― 「……ジグマール隊長も私も、護りたいものは同じだと思っています」 「だから協力しろとでも?……高町君、あまり私を失望させないでもらいたいのだが」 「無理、ですか?」 「当然だ。私は私が確実と信じるやり方でこの大地を護る。君の理想論には付き合っていられない」 尚も今更こちらに手を差し伸べて協力を求めようなどと、愚かしいにも程があるとにべも無く彼女の誘いを切り捨てる。 なのははそれに残念そうな表情を浮かべている。だがジグマールには知ったことではない。 「もう良いかね? ならばいい加減、下がって―――」 「それでお子さんに顔向けが出来ますか?」 ジグマールの言葉を遮るように言ってきたなのはの言葉は、さしもの彼にも無視できぬものだった。 消し去りかけていた彼女への怒りが再燃してくる。息子と自分の何も知らぬ小娘などにその話題には触れて欲しくなかった。 我が子を愛しているからこその道であり、戦いだというのに、何も知らない小娘風情が――― 「以前、貴方から教えられて私も色々と考えました。娘……ヴィヴィオに相応しい母親っていうのはいったいどうしたらなれるのかって」 だが高町なのははジグマールが殺気すら込めかねない怒気を無視したまま語り始める。 己の事、そして娘の事、彼女たちが親子となったその経緯を……… ……似ている、話を聞いて確かにそれはジグマールもまた認めたことだ。 自分たち親子と同様に、高町親子もまた非常に境遇の似た背景が存在していた。 共感を覚えなかったか……そう問われて否定をすれば恐らくは嘘だ。 確かに、彼女の語るその話に僅かばかりとは言えども確かに自分たち親子に重ねた光景を見たのは事実だ。 「あの子は兵器として生み出された、本当の親さえも存在しないそんな子供だったのは事実です。でも私はそんな事は関係ないと、我が子として愛する事を決めました」 家族ごっこ、そう揶揄されても仕方の無いくらいそれは滑稽な箱庭なのかもしれない。 自分も娘も、お互いに足りなかったものを依存し合うように求めあったと言われても完全には否定できない。 それでも以前にジグマールが言ってくれたように、なのはにとってヴィヴィオは掛け替えのない愛しい娘であり、彼女の方もまた自分をそう見てくれている。 だからこそ、ごっこ遊びと笑われようとも、血の繋がらぬ本当の家族ではなかろうとも。 そんなものとは関係なく、何よりも深く結び合った絆と共に二人で生きていこうと誓った。 正直に、真っ直ぐに、互いの心に素直になって。 ヴィヴィオの母親として、高町なのはは生きようとそう決めた。 「……ここで真実の奥に隠されたその不正を見逃せば、私はきっともう二度と、あの子とは正直に向き合えない……そう思ったんです」 我が子に嘘を吐き、騙し、信じている姿を裏切ってしまえば……もう自分はヴィヴィオの母親でいてやれる資格だって失うだろう。 何よりも、娘に心から笑いかけられるような母親になれなくなることだけは絶対に嫌だった。 どんな時でも、娘の前だけでは彼女が信じる、誇りに思う母親でいたい。 それが……高町なのはの嘘の吐けない本当の娘に対しての気持ちだった。 「貴方はどうなんですか? 息子さんが今の貴方を見て本当に……笑ってくれるんですか?」 なのはのその言葉は、確かにジグマールにとっては万の罵倒や非難を受けるよりもキツイものだった。 心の奥底に殺して仕舞い込んだ良心すら、目覚めかねないその言葉。 ……或いは、認めてしまえばそれは己にとって救済になるのでは? ―――否、断じて否! 「……君の価値観を私たち親子に押し付けるのはやめてもらいたい」 重く、搾り出すような声でそうとだけ反論する。 救い、今更己がそんなもの求めて良い立場ですらない。そんな甘い幻想に逃げることは許されない。 何よりも愛する我が子を免罪符の如く使うなど……断じて、あっていいはずがない。 故に、なのはの言葉は聞き入れられない。彼女が不器用であれども高潔な親子であろうというのなら、それも良いだろう。そこまで口を挟む心算も無い。 だがこちらとて、屍山血河を作り上げ、死後に地獄の最下層に叩き落されようとも、護りたい者がある。その為に戦っている。 そして自分は、その為に自分自身でこの道を選んで歩んでいるのだ。 彼女が示す不確定な理想論に、罪悪感から逃れたいが為の救済を目的で加担することなど絶対に出来ない。 そうでなければ、今まで犠牲にしてきた者たちすらも裏切ることになってしまう。 だからマーティン・ジグマールは決して揺らがない。揺らいではならない。 己の不始末もその末路も、既に覚悟はしているのだから。 そして、それは高町なのはにも理解できたのだろう。 伸ばした手は掴んではもらえない。告げた言葉は届かない。 諦めるとは別のベクトルで、自分たちと同じようにこの男もまた絶対に揺るがないであろうことは理解できた。 だからこそ、せめて最後に告げる言葉があるとするならば――― 「……後悔、しませんか?」 「そうしない為にこそ、今の私があるのだ」 「……分かりました。それでは……ありがとうございました、マーティン・ジグマール隊長」 最後に一度、寂しげな笑みを零しながらなのはは深々と彼へと礼を告げ頭を下げた。 これが訣別の証であろうとも、それでも自分に大切なことをこの大地で気づかせてくれた恩人の一人として。 心からの感謝と敬意を込めて、なのははジグマールと己の道が二度とは交わらぬことを覚悟した。 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 前へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3163.html 次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3165.html
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/153.html
スティンガースナイプ 魔力光弾「スティンガー」を発射後にコントロール、一発の射撃で複数の対象を殲滅するための魔法。 クロノが発している「スナイプショット」は弾丸加速のキーワード。 高速機動する弾丸の制御には極めて精密なコントロール能力が必要だが、クロノはこの系統の魔法を得意としている。 ブレイクインパルス 杖・あるいは素手での接触によって対象の固有振動波を分析、振動エネルギーで対象を粉砕する魔法。 接触と数瞬の停止を必要とするが、少ない魔力で高い破壊力を叩き出すことが可能。 近接戦闘能力と同時に高い魔法の制御能力がなければ扱うことの難しい、難度の高い魔法と言える。 ブレイズキャノン クロノの放射系魔法。ブレイズ(炎)の名の通り、熱量を伴う破壊魔法。 大威力の瞬間放出を上手く制御して、長時間放出による隙を作らないような調整をされている。 クロノは使い魔やパートナーによる現場サポートを必要としない、スタンドアローン型の魔導師でいることを選択しているようである。 サンダーレイジ フェイトのロックオン型攻撃魔法。 上空からの砲撃でなのはたちを巻き込まないため、また、瞬間的な静止力のために速攻性バインド能力の発動・大威力精密攻撃が可能なこちらの魔法を選択している。 ディバインバスター なのはの主武器。今回は対人使用ではないため、物理破壊を伴うセッティングになっている。 サンダースマッシャ― フェイトの放出系魔法。なのはのバスターに呼応するように、高い威力を打ち出している。 ディバインシューター・フルパワー ディバインスフィアの多数生成による一斉魔力射撃。より大きな魔力消費により、自動追尾とバリア無効化の能力を失わないままに弾数が増えている。
https://w.atwiki.jp/chinihi/pages/108.html
スーツ攻略[魔法少女リリカルなのは系捕獲専用スーツ] ■No 2091 高町なのは HP MP 防御 速さ 命中 重量 地上 水中 市街 空中 タイプ ポイント 名声 レベル 500 530 67 95 110 30 0 -3 2 4 魔 2000 70 50 スーツ特殊能力 2##9##-90 専用装備 装備名 派生元装備 種類 ダメージ 耐久 消費 重量 最低射程 最大射程 補足 ショートバスター フェイズガン 武器 110 12 1 10 30 70 魔法 備考: 装備名 派生元装備 種類 ダメージ 耐久 消費 重量 最低射程 最大射程 補足 スターダストフォール 特殊魔法 武器 160 99 80 10 40 70 シールド無効 備考: 装備名 派生元装備 種類 ダメージ 耐久 消費 重量 最低射程 最大射程 補足 スターライトブレイカーex-fb 最後の切り札(中距離魔法攻撃) 武器 230 99 160 15 40 70 魔法 備考: 装備名 派生元装備 種類 重量 補足 プロテクションEX シールド 装備 10 複合効果あり 備考: ■No 2092 フェイト・T・ハラオウン HP MP 防御 速さ 命中 重量 地上 水中 市街 空中 タイプ ポイント 名声 レベル 540 500 45 130 100 30 2 -3 1 4 魔 3000 120 66 スーツ特殊能力 2##4##-90 専用装備 装備名 派生元装備 種類 ダメージ 耐久 消費 重量 最低射程 最大射程 補足 トライデントスマッシャー エルサンダーの魔道書 武器 160 99 70 10 30 55 魔法、麻痺 備考: 装備名 派生元装備 種類 ダメージ 耐久 消費 重量 最低射程 最大射程 補足 ライオットセイバー 最後の切り札(近接魔法攻撃) 武器 220 99 145 15 0 30 シールド無効 備考: 装備名 派生元装備 種類 重量 補足 ソニックムーブ レッグリング 装備 10 速さ+20、移動力+10 備考:
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3155.html
二度目の邂逅。一度目のドンパチの事もあり多少は気まずいなり殺伐としたものになる、そうカズマですら思っていたというのに、 「カズマ君!? また会えたね!」 相手はそれこそこちらとの再会を喜ばんばかりの上機嫌だ。 その意外すぎる反応が不意打ちとなったのは事実だ。お蔭で出鼻を勢い良く挫かれるという結果になってしまった。 そうこうしている内に相手はこちらに無造作に近づいてくる。まるで無防備、警戒しているのかすら怪しいとカズマの方が正直に思ってしまうほどに。 「元気だった、あの時の戦いで怪我とかしなかった?」 喧嘩をしておいて怪我をしないもクソもないというのに、本当に心配そうと言わんばかりになのははそんな事を訊いてくる。 因みに、非殺傷設定の魔法は喰らったところで外傷は生まれない。あれだけ何発も喰らったというのに傷跡一つ無い事実にはカズマ自身も後で首を傾げたことだった。まぁ、その翌日が、動きたくも無いほどに疲労が溜まったように体がだるかったのだが。 だがそんな事実も知らないカズマにしてみれば、あの喧嘩で怪我がなかったかと気遣われたところで、それは舐められているのと変わらないことだった。 故に益々眼前の相手に鬱屈した怒りを抱いたのは言うまでもないことだ。 それこそこのままこの場でぶっ飛ばしてやりたい欲求に駆られはしたが、彼はソレを彼にしては珍しい程の鉄の自制心で押さえ込む。 何故か、そんな事は決まっていた。此処が周りの眼がある街中だから、それだけに過ぎない。 いくら無鉄砲で考え無し、そして向こう見ずの馬鹿とはいえ、此処で自分がアルター使いだと周囲の人間に知られてしまえば、そのとばっちりはかなみにまで及ぶ恐れがあった。 例えインナーの集落とは言え、否、インナーの集落だからこそネイティブアルターに対する恐れなどの感情、迫害意識は強い。 そんなものをカズマ自身はまるで恐れていないとはいえ、君島やかなみまでもが同じとは言えない。 だからこそ、彼は珍しいほどに他人の為にこの場は自制を選んだ。 ただ――― 「おい、アンタ。ちょっと面貸せよ」 不機嫌そのもの、傍から見ればチンピラそのものの態度と成り果てていたが。 「此処まで来りゃあ問題ねえだろ」 即ち、好きなだけ暴れたところで誰にも被害は及ばない。 その場にいる当人二人を除けば、であるが。 町から離れて暫くしたところにある開けた荒野。その場で互いに五メートル弱の距離を取りながら向かい合う二人。 カズマの顔にはこれから始まる前回の続きへの高揚。 なのはの顔にはこうなってしまった事に対する明らかな悲哀。 対照的な表情を浮かべる中で、両者のぶつかり合いは避けられぬものとなろうとしていた。 「………カズマ君、私は君と戦う心算なんてもう無いんだけど」 道すがらしてきた説得をこの場でもう一度行うも、返ってきた返答はやはり、 「何度も言わせんな、まだあの時の喧嘩のケリがついてねえんだよ」 そのケリが付くまで、仲良くお手手繋いでお話し合いなどどうして出来ようか。 尤も、そんなものケリが付いたところでする気は更々カズマには無かったが。 それでも、兎に角、この相手との決着を付けないことにはどうにも最早収まりが付かないことだけは間違いなかった。 「―――だから始めようぜ、喧嘩をよぉ!?」 その叫びと同時、アルターを発動。右腕に装着させたシェルブリットを相手に突きつけながら、 「さぁ、出せよ! テメエのアルターをよぉ!」 そうやって相手にも早くアルターを出すように促がした。 無抵抗な相手を殴るのは趣味じゃない。何よりも、コイツは本気でぶつかり合ったのを破らねば意味が無い。 だからこそ促がして、相手がアルターを発動させるまで待つ。 だが――― 「―――私は、もう君とは戦わないよ」 眼前の相手は、そんなふざけた言葉を躊躇うことも無く言ってきた。 相手の怒気が殺気に変わったのを高町なのはは確かに感じた。 それでも、先の言葉を覆そうという意思は無い。レイジングハートをセットアップする気も当然無かった。 それがなのはのこの場でのカズマを相手に選んだ選択だった。 戦わない、それがどれ程相手の琴線に触れた危険な選択なのかは分かっている。 それでも彼女はそれを承知でこのやり方を選んだ。 悪魔らしいやり方ででもお話を聞いてもらう。一度はそうしたし、本来ならばそれは選んで当然の選択だったのかもしれない。 それでも、そのやり方ではきっと彼には届かない。矛盾したことかもしれないが、そのやり方をこの相手に続けたところで延々とその果てに話し合いは出来そうに無い。 そう思えてしまった、そしてそんな不屈とも言える頑なさが向こうにはあった。 だからこそ、彼女は戦い方を変えたのだ。 そう、戦いを放棄したわけでは無い。ただ暴力ではない別のやり方でこの相手にこちらの思いを届かせようと思ったのだ。 故にこそのこのやり方だ。非暴力、非協力、不服従、それを貫いた先人でもあるガンジーは改めて偉大だとなのははふと思いもした。 「………ざけんなよ、テメエ」 既に沸点はギリギリであることを容易に予測させる、怒りに満ちた相手の言葉。 だがそれに臆するエースオブエースではない。 「テメエじゃないよ。わたしの名前は高町なのは。まだ名乗ってなかったよね? 改めてよろしくね、カズマ君」 そう相手へと前回名乗り損ねた自分の名前を告げる。 まずは最初に互いの名前を知ることからが、分かり合うことへの第一歩となる。その考えを彼女は十年前から何一つとして覆していない。 だからこそ名乗り、改めて友好の為の笑みと言葉を投げかけ――― ―――瞬間、相手は猛然と問答無用で拳を叩きつけてきた。 それこそ衝撃は凄まじく、纏めていた髪が一斉に後ろに流されてばらついたほど。 それでも微動だにせず、なのはは寸止めされた拳を前に決して恐怖の感情を欠片も表情へと表す事は無かった。 避けもしない、対応しようともしない。カズマが寸前で拳を止めていなければ、ソレは確実にこちらの顔面を捉えて直撃していただろう。 こんなものを何の防備も無しにマトモに顔面に食らえば、下手をせずとも命は無い。 それを充分に理解していたはずだというのに、なのはは何一つの対応を取らなかった。 「ふざけんなよ、テメエ。何で避けねえ、防がねえ、俺が本気で止めるとでも信じてたのか!?」 理解できない相手の奇行に、カズマはただ猛然と拳を寸止めにしたまま睨みつけ怒鳴る。 それこそこのまま怒りに任せて拳を振り抜くことだって出来ると、そうはっきりと突きつけながら。 だがそれに対してすらなのはは、 「うん、信じてたよ。だからこうして止めてくれたじゃない」 平然と満面の笑みを浮かべながら、憚ることなくそう言ってくる。 その笑み、その言葉が、どうしてもあの少女と重なる。 それが我慢なら無くて、カズマは獣のような咆哮を上げながらそのまま拳を振りぬこうとし――― 「………ねえ、カズマ君」 「るせえ、俺に話しかけんじゃねえ」 完全に不貞腐れたように鼻を鳴らしてソッポを向く彼に、なのはは苦笑を浮かべる。 結局、彼の拳は彼女を殴れなかった。 無抵抗だったから、相手がどうしてもかなみと被って仕方が無かったから。 尤もらしい理由を挙げていけば、それなりに見つかるだろう。 だが結局の所、彼がなのはを殴らなかった理由は一つだ。 ―――殴ったら、負けだと思った。 別に女子供を殴ることに躊躇いを覚えたからでは断じてない。 一度敵と認めれば、例えそれがどんな相手だろうとも“シェルブリット”のカズマならば容赦をしない。 だからこそ、相手が例え無抵抗の女であろうと『敵』ならば容赦をする必要など何一つも無かった。 ………そう、『敵』ならば、だ。 だが今のこの女は違う、正直『敵』にすらならない、そんな無害で無抵抗で、そしてムカつく相手だ。 ならば例え『敵』でなかろうともムカつくならば充分にカズマにとっては殴り飛ばすにたる理由にはなる。 そうであるはずなのに、それでも殴らなかったのは相手が事実上、 勝ち越している敵 であった存在だからだ。 今は敵じゃない、だが逃がす心算も無い。そしていずれ敵になるはずだ。 その期待があったからこそ、彼はこの女をこの場では見逃した。 本当の戦いの場で、この場や前回分の借りも含めて、纏めて全部叩き返してやる為に。 その時が来るまでは殴れない。言わば我慢こそが眼前の相手に選ぶカズマのこの場での戦い方だ。 ………尤も、普通に戦うよりもそれは彼にとって遥かに難易度の高いものであったが。 どちらにせよ、今は殴れない。殴らないと決めた。 ならばこんな相手には用は無い。ただでさえ声がかなみと被っていて不快だというのに、やること為すことが一々癇に障って仕方が無い。 それこそ一秒だって面を合わせていようとは思いたくも無い。 故にこそ、相手が戦わない以上、ならばもうコイツに用は無い。 とっととこの場を去ろうと思い踵を返そうとしているのだが……… 「カズマ君、少しお話をしない?」 絶対にノゥ! そう振り返って怒鳴ってやりたい気持ちをグッと抑える。 そうやって反応すればするほど、それはきっと相手の思う壺だ。話術では絶対に敵わない、煙に巻かれるのがオチだと予見出来ただけ、まだカズマは鋭かったと言えるだろう。 故に無視、相手の呼びかけにも応えずにそのまま背を向けて彼は町に戻る為に歩き続ける。 だが……… 「………おい、テメエ」 「何かな? あ、それと私の事も名前でちゃんと呼んで欲しい―――」 「んなことはどうでもいい! それより俺の後を付いて来るんじゃねえ!」 とうとうそれが我慢できずに振り返り、そう怒鳴っていた。 カルガモの子供でもあるまいし、一々後を付けられてはかなみの元へと帰る事も出来ない。 やはりぶっ飛ばすか、と考えも本気で改めようとすら思いもする。 正直、この相手のしつこさは想像以上、本気で辟易すらカズマはしていた。 「しつこすぎるんだよ、テメエ。いい加減、鬱陶しいぞ」 「………そうかもね、自分でもしつこいとは思うよ。でも―――」 カズマの言葉になのはは苦笑の度合いを強めながら、相手の怒気に物怖じする様子も無くアッサリと認めながら、 「―――それでも、私は君とお話がしたい」 ハッキリと、それを譲る心算もないと言った様子で最後に毅然と告げてくる。 そのあまりにもな我が儘振りには、さしものカズマを置いてすら怒りを通り越し、呆れ………否、 「ハハ、何だよそりゃ」 正直、不覚にも可笑しく思ってしまい思わず笑ってしまった。 それを見たなのはは流石に少しバツが悪くなったのか、少し恥ずかしげに、 「………やっぱり、我が儘……かな?」 そんな事を言ってくる。その言葉と態度に益々可笑しくなったカズマは、 「ああ、そりゃあ我が儘だろ」 そうアッサリと肯定してやった。 どうしてこんな奴を相手に少し愉快に感じてしまったのか。 冷静になって振り返ってみても、それが不思議でたまらない。 相手はホーリーのアルター使い。それも一度は派手な喧嘩をやらかした相手だ。 今は戦わないが、いずれは戦う、倒さねばならない相手だ。 仲良しこよしなんて間違っても出来なければ、そんな友好を深めようなんて更々思いたいとも思えない相手だ。 第一こいつはかなみに声が似すぎてる、それだけでムカつく野郎だというのに。 ………そう、本当にムカつく野郎だってのに。 ―――どうして、こうまで頑なで我が儘で………俺に少し似てやがるのかねえ。 だからだろう、憎悪だとか敵愾心だとかそう言った感情とは関係の無い部分で。 この時初めて、カズマは高町なのはに少しだけ共感を覚えたのだ。 「………ったく、しょうがねえな」 やがて、遂に観念したようにカズマは溜め息を吐きながらそう呟く。 今回だけだ………ああ、間違っても今回だけだ。 内心で自身にそう言い訳めいたように言いきかせながら、カズマはなのはから視線を外しソッポを向きながら、 「今回だけだ。………言っとくが本当に今回だけだからな! 今更仕事にも戻れねえし、少しだけテメエの話って奴に付き合ってやる」 実に不本意だと顕に見せ付けながら、彼女へとそう言い切った。 「………え? 本当に………?」 あれだけ自分の方からしつこく言っておきながら、こちらの言葉が信じられないとでも言った様子で、彼女は呆然と驚いた様子でそう訊いてくる。 聞き返してくんじゃねえよ、そう思いながらもソッポを向いたままカズマは頷いた。 瞬間、 「ありがとう! 本当にありがとう、カズマ君!」 まるで子供の様に大はしゃぎしながら、なのはは勢い良くこちらの両手を掴んで礼を述べてくる。 いきなりの相手のその態度に、それこそ困惑しながらカズマは慌ててなのはの握ってくる手を振り払う。 「な、馴れ馴れしくすんじゃねえよ!」 動揺を隠し切れずに少し恥ずかしげに怒鳴るカズマに、流石になのはも少しばかりはしゃぎ過ぎたのを自覚した様子で、 「あ、ごめんね。………でも、本当に嬉しかったから、つい」 ついで手を握って振り回されては堪ったものじゃない、そうカズマも思い言ってやろうとも思ったが、結局、その時に彼女が浮かべていた満面の笑みを見てしまってはそんな毒づきを吐くことも出来なかった。 「………ったく、本当にムカつくぜ」 調子が狂うったらありゃしねえ、そう聞こえないほどに小さく呟いていたのは、彼なりの照れ隠しだったかどうかは、本人以外には知る由も無い。 「………で、何を話そうってんだよ?」 近くの岩陰に腰を下ろしながら、カズマはなのはに一番重要なポイントであるそこを問う。 「そうだね、聞きたいことは色々とあるんだけど………」 断りも無しに隣に同じように座り込みながら、なのははこちらを真っ直ぐ見つめながら訊いてくる。 「君は、何故戦うの?」 実に単純であり、非常にツマラナイ質問だった。 というより仮にもロストグラウンドで生まれたアルター使いに対して問うような質問だとも思えなかった。 「何だよ、本土暮らしが長いのか? そんな答えなくても分かるような質問してくるなんてよ」 アッサリと相手が言ってきたその言葉になのはは戸惑った。まるで一+一も分からないのかお前は、と馬鹿にされているのと同じレベルの言われ方のように感じたからだ。 「………おかしな質問、かな?」 「おかしくないとでも思ってんのか? アンタ、本当にロストグラウンドに生まれたアルター使いか? 何年本土にいたんだよ?」 逆にそんな風に問い返され、返答になのはが困ったのは言うまでも無い。 そもそもなのははアルター使いでもなければ、ロストグラウンドはおろかこの世界の生まれですらない。 便宜上、本土からのアルター使いと称しているだけで、まったくのそれは嘘の経歴に過ぎない。 だがジグマール以外にはその秘密を明かせない以上、この場においてもその嘘を通さなければならない必要がある。 嘘を吐き続けるというのは後ろめたいし辛い事だ、がそれも任務と割り切るしかない。 故にこそ、此処はカズマの質問に答えて話を合わせるしかない。 「………そうだね、私や他の皆はアルター能力に目覚めてから物心ついたその時には、ずっと本土で暮らしてたから」 先の桐生水守への応対とは違ったものとなった。 だがこう言えば取り敢えずはこちら側との認識のズレは誤魔化せるはずだ、そう思いながら表面上は淡々とした態度でカズマに告げる。 彼もそれには納得したのか、成程なと鼻を鳴らして言ってきた。 「どうりでお綺麗で、満ち足りてるわけだな。テメエらは。実質、本土で育ったんじゃそりゃあ此処じゃ異質に感じるわけだ」 それはなのはが先程まで大きな課題と思っていたインナーとの間の齟齬、受け入れられない異質感を言い当てた言葉だった。 「………そんなに、私たちは違うのかな?」 「違えよ、明らかにあのホーリーの連中ともテメエらは違う。同じように振舞おうとしちゃいるが、振舞いきれてなければ理解も出来てねえんだよ」 歯に衣着せず思った事をハッキリとストレートに言ってくるカズマ。 だがそう言われただけではハッキリとはまだ分からぬなのはには更に問い返すしかない。 「何が、そんなに違うの?」 「そこだよ」 「え?」 カズマが間髪入れずにしかし迷うことなく言い返してきた言葉の意味に彼女は戸惑う。 それが分かっているのだろう、カズマは若干不機嫌になりながら続きを口にする。 「違いが何処にあるのか、アンタはそれすら分かっちゃいねえだろ。此処で生まれ育った奴ならな、理屈云々は置いといても本能でそれが理解できる。 そもそもアンタ、マジで今日生きるのに切羽詰ったことはあるか? 食い物も満足に手に入れられずに他人から奪ってでも手に入れようと考えたことがあるか? 襲い掛かってくる外敵から身を守る為に我武者羅に抵抗したことがあるか? 誰にも助けは期待できず、テメエの力と覚悟だけで生き抜こうと決めたことはあるのか? ………要するに、此処はそういう荒地でどいつもこいつも少なくともそれくらいの経験は大なり小なり潜りながら生きてきてる」 アンタらにはそれがあるのか、そう問いかけてくるカズマのその言葉になのはは直ぐには頷けなかった。 理解している心算だった、この大地が生き抜くということにおいてどれ程過酷な場所かということは。 だがそれも所詮はやはり『心算』に過ぎなかったらしい。 確かに、なのはは生まれ育ってきた人生の中で、そんな経験をしたことは一度も無かった。 ハングリー精神、雑草魂、そんな言葉では一括りに出来ないほどにこの大地は厳しいのだ。 インナーと呼ばれる多くの人たちは、そう言った経験を潜り抜けてきている。ただ生きるという行為の中にも、生き残るという確たる目的を持って生きている。 生きていることが当然の世界で生きてきた自分たちでは、それが本当の意味で理解できずに溝を感じてしまうのは当たり前のことだったのだ。 それを指摘されてはじめて、漸くになのははその事に気づいた。 「だからアンタの質問はふざけたもんなんだよ。いいか? 生きるってのは戦うってことだ。戦いってのは意地を見せて貫くことだ。そんなの、俺たちアルター使いからすりゃあ尚更当たり前のことだろうが。少なくとも、俺たちが俺たちとして生き抜こうと思えば、戦いは絶対に避けて通れねえ。此処はそういう場所だ」 だからこそ、そこで退くのか、それとも進むのかは当人の選択次第だ。 少なくとも、カズマならば退かない。只管に前へ進む、前だけしか見ない。後ろに振り返っている余裕なんてものを彼は持ち合わせていないからだ。 そして彼はそんな選択をずっと続けて生きてきた。今更にそれを変えようとも思わなければ変えたいとも思わない。 最後まで、倒れるまで、彼は只管に前へと進み続けるだけだ。………ああ、勿論倒れるならば前のめりだ。 それを言葉にはしなかったが、なのはにはそれが分かる気がした。 漸くに、何故に彼がこんなにも強く、惹かれるほどに輝いているのか、その本質に少しだけ彼女は触れることが出来た気がした。 「ロストグラウンドなんて荒地で生まれて十六年。親の顔も本名も分からず、ただ我武者羅に生き抜いてきた。生きる為には何だってやった。裏切りだって何度も喰らってきた。………だがよ、俺はそんな生き方に一度だって後悔は抱いてこなかった。何故だか分かるか?」 カズマのその問いになのはは首を振る。 それが分かっていたのだろう、気にした素振りも無く彼は続ける。 「それはな、全部俺自身が選んで決めてきた道だからだ。俺にとって唯一の誇りのこの拳で選び取ってきた道だったからだ」 偽らず、諦めず、そうやって選んで自ら進み取ってきた道だ。 後悔なんて間違っても起きない、起こさない、そう考えて生きてきた。 ならばそれがどんな道であれ、憚る必要が何処にある? 堂々と胸を張って、誇りを持って拳を勝ち上げながら示せばいい。 これが俺の選んできた生き方だ、と……… 「アンタはどうなんだよ? 満足に生きてるか? 本音も言えず、嘘で固めた生き方じゃ生きた証も何もあったもんじゃねえだろ?」 まるでそれが見透かされたかのような言われ方で、思わずドキリとするなのは。 ここ最近、ずっと抱えていた悩みそのものを言い当てられたかのようなものだった。 実際、今自分の目の前には大きな壁が立ち塞がっているように感じて仕方が無かったのだ。 「目の前に壁が立ち塞がってるってんだったら迷うな。いいか、迷うな。迷えばそれは他者に伝染する。こうと決めたことがあるんなら、迷わず最後までそれを突き進め。目の前に壁があるってんなら、迷わずにぶち壊しちまえばいいんだ」 アルター使いだというのならそうやって生きろ、そう彼はこちらに告げてきた。 何だか話し合うというよりも、言いたいことだけ一方的に言われたかのような現状だ。 だがそれに満足したように、話は終わりだとばかりにカズマは立ち上がる。 なのはも慌てて立ち上がるが、カズマは気にした様子も無くそのまま行ってしまう心算のようだ。 呼び止めようかとも思ったが、彼の背中がそれをありありと拒否しているのが目に見えた。 仕方が無いので、呼び止める事をなのはは諦めた。 「―――ああ、そうそう」 何かを言い忘れていたという態度も顕に、一度だけカズマはこちらへと振り向いてくる。 そしてハッキリとこちらを真っ直ぐに見据え、 「今日はこうだったが、次に会う時はまた敵同士だ。言っとくが、俺は馴れ合う心算なんてこれっぽっちも無え。アンタは今の俺にとっての立ち塞がる壁だからな」 忠告というよりは警告と言った様子で言ってきたその言葉を、なのはは改めて重く受け止め反芻する。 無論、暴力による戦いをする心算は無いことは変わらない。だが眼前の相手がそれをいつまでもみすみす見逃す相手ではないのも明らか。 それでも――― 「私にとってもカズマ君、君は壁だよ」 「………ほぅ、面白えじゃねえか。ソイツは都合がいい」 「―――でもね」 不敵に、獰猛に笑みを浮かべるカズマを前に、言葉をそこで一度区切りながら、はっきりと彼を見据えて彼女は言う。 「私は私のやり方で壁を乗り越える。だから―――今度は名前を呼んでもらえると嬉しいかな」 愚かだと、度し難いと、無意味な選択だと罵られようと。 カズマがカズマであるように、高町なのはも高町なのはだ。 彼の先の言葉を聞いて、尚更にこちらも後には退けなくなった。吹っ切れてしまったと言ってもいいだろう。 彼が彼のやり方を、変えず曲げずに押し通そうというのなら。 自分もまた、己のやり方を最後まで曲げることなく貫き通そう。 何度この手を彼に振り払われようが、何度でもこの手を取ってもらうまで差し伸べよう。 カズマを含めたロストグラウンドの住民と手を取り合いながら、管理局からの任務も果たす。 両方やらなければならないのが、エースオブエースの辛いところだ。 だがそれでも――― 「覚悟はいいかな? 私は出来てるよ。言っとくけど、私も相当しつこいから、そっちも覚悟はしておいてね」 笑みと共に、今度こそは何一つ偽ることなく彼女はそう言い切った。 実に気に入らない、やっぱり訳の分からないムカつく女だ。 それが眼前の相手にカズマが下した最終決定。 だがそうであるからこそ、 「面白えな。いいぜ、認めてやるよ。………やっぱりアンタは、俺の敵だ」 ぶっ飛ばし甲斐のある、倒すに足る敵。 この眼前の女は、間違いなくソレだ。 そう、あの劉鳳とも並ぶほどの……… それが互いの宣戦布告。 憎らしいほどに不敵に、鮮やかなほどに爽快に。 笑みすら浮かべて両者はそれぞれ、互いの戦いの覚悟の程を確認し合った。 もはやそれ以上、この場で語る言葉は無い。故にこそ、どちらからともなく背を向けて互いの道を進み始める。 この道は同じモノではない。行き着く先すら別の場所。 それでも両者が互いの道を交わらす機会があるというのなら。 それは互いの戦いに決着を付けるその時以外にはないことだろう。 その夜、やはりカズマはかなみにこっ酷く怒られていた。 それも当然のこと、あれだけサボるなと念を押したというのに早速にそれを破ってしまったのだから仕方が無い。 「………ああ、何だ……そのな……かなみ………悪い、すまねえ、許せ………な、この通り」 そう言って拝むように謝り倒すカズマだが、ソッポを向いて拗ねてしまっているかなみが聞く耳持たぬという様子なのは明らかだった。 此処まで機嫌の悪い彼女の姿はかつてなく、それ故にさしものカズマもどうしたものかと困り果てていた。 「………ええっとですね、かなみ………さん? あれには少しばかり深い理由がありまして………そのやむを得ない急用が出来たというか………」 歯切れも悪く、必死に言い訳を口にしようとするが、整合性のある嘘も彼に吐ける筈も無く、ホトホト困り果てた状態となっていた。 まぁ、かなみが怒るのも無理からぬことだ。言ってみればカズマの取った行動は約束を破った裏切り行為にも等しい。 普段から信じていた少女の信用を台無しにしてしまった以上、それを修復するのは容易などではないことは明らかだ。 壊すのは容易であり一瞬だが、復元は困難であり時間の掛かることだ。 それは何に対しても当たり前に適用する真理、普段から前者が専門分野となっているカズマには上手くいかないのも当たり前のことだった。 「………もう知らない。カズくんのバカァ!!」 やがて益々不機嫌と化した様子でかなみは最後にそう言うと共に寝室に引っ込んでしまった。 カズマが咄嗟に彼女の背に向かって伸ばそうとした手も空を切り、手持ち無沙汰になったのも自業自得と言ってしまえばそれまでだ。 「………バカ、か」 至極その通りの言葉に反論する気力は彼には残っていなかった。 項垂れて力なく椅子に座り込みながら、カズマは力も無く呟く。 「………ついでに甲斐性なしのロクデナシ、後クズも追加しといていいぜ」 明日、仕事場に行けば間違いなくおっさんおばさん連中からどやされるなと考えると、それこそ嫌になってくる。 「………今日は晩飯抜きみたいだし、尚更だよなぁ」 本当に今日は最初から最後まで厄日だったらしい。 それを思うと、やはり今日のカズマからは溜め息が絶える事はなかった。 寝室に戻りベッドに飛び込むように不貞寝を決め込むかなみは、いつになく不機嫌だった。 理由は当然ながらカズマが約束を破ったこと。 そして何故約束を破ったのか、詳しい事を説明してくれないこと。 そのどちらも非があるのはカズマだ。当人自身もそれは認めている。 だがそれでもかなみはカズマを許す気になれない。 よくできた子と評判のかなみだが、それでもまだ彼女が幼い女の子であるのは事実。 そしてカズマに思慕にも似た思いを持っているからこそ、尚更だ。 「………カズくんの服から、香水の匂いがした」 まるで夫の浮気に気づいた妻のような発言だが、ロストグラウンド―――それもアウターに住んでいる者ならば妙だと首を傾げる事実でもある。 実際、都市部なら兎も角、未開発地区とも称されるかなみたちの住んでいるアウターは、その大原則が自給自足だ。 食料などは兎も角としても、香水などの嗜好品の類はそもそもが殆ど出回らない稀少品だ。 確かに都市部から横流しされたり、闇市などでそういった商品が売買されているのも事実。かなみでもそれ位は知っている。 だがどちらにしろ、何故カズマから香水の香りが漂っていたのかは不明なままだ。 間違ってもカズマ自身がそんなものを付ける訳がないし、買うにしてもそんなお金は家には無い。 そもそもあれは女物の香りだ。ならば誰か香水を付けた女性と彼が会っていた。そう考えるのが普通だ。 ならばそれは誰だ、かなみはそもそもカズマの交友関係など君島くらいしか知らないし、自分の交友関係の中にも香水を身に付けられるほど裕福な者はいない。 ならば必然的に行き着くのは、かなみがまったく知らない誰かということになる。 「………やっぱり、“りゅうこ”さん?」 以前、かなみはカズマが寝言でそのような女性の名をどこか嬉しそうに呟いていたのを憶えている。 実際はカズマは“劉鳳”と言ってそれを彼女が聞き間違えているだけなのだが、当人はそんなことを知らず、誤解が続いている。 ならば今回のこの香水の件についても、件の“りゅうこ”と思われる人物と会っていたという可能性が非常に高い。 だとするならば、それはやはり……… 「………じゃあやっぱり、カズくんはわたしとの約束より、“りゅうこ”さんと会う方が大事なんだ」 ちゃんと仕事をしてくれと頼んだ自分の頼みも、カズマはあっさりと破ってしまった。 そしてその“りゅうこ”と会っていたというのなら、それはその言葉通りこそが事実だということに他ならない。 それを嫉妬と呼ぶのかどうかはかなみには分からない。 確かに自分は子供だし、カズマが誰が好きであろうともそれは彼の自由だ。 そもそも自分たちは互いに赤の他人、数奇な縁で出会い、なし崩し的に一緒に暮らしているようなものだ。 だがそれでも――― ―――それでも、由詑かなみにとってカズマは、掛け替えのない“家族”なのだ。 あの雨の日の出会いは、かなみにとっての全てだった。 永遠に続いて欲しいとすら思った雨宿り、その想いは今も色褪せてはいない。 天涯孤独という身の上は、此処ではさして珍しいものではない。自分のような境遇など、この大地には何処にでも転がっているような話だ。 だからかなみは己をさして特別と思ったことは無い。 それでも、かなみにとって特別というものがあるとするならば。 それは、あのカズマとの出会い以外の何ものでもない。 あの瞬間が今の由詑かなみの始まりであり、全てだと言い換えていい。 それはイコールでかなみにとっての世界の始まりはカズマであったとも言うことだ。 何よりもあの雨の日を尊く、大事に思っているかなみにとって、あの日出会ったカズマこそが自分にとって一番大切な人だった。 自分の一番大切な人に一番大切に思われたい、そう思ったところでそれは罪ではない。 何よりもかなみはまだ幼い、そういった独占欲を抱いたとしても何ら不思議ではない。 だがだからこそ、カズマが約束を破ったという事実は、その想いを尚更強く彼女に抱かせる。 そして歳相応以上に聡明さを持ってしまっているからこそ、それが叶わないであろうことを知ってしまっている。 カズマは自分を大事には思ってくれている。それは自惚れでは無く事実として、かなみ自身でも自覚出来ていること。 実際、彼女が思っている以上にカズマはかなみを大事に思っている。その思いの深さには彼女もまた気づいていない。 だがそれに気づいておらずとも、かなみ自身が悲しいほどに知っていることがある。 それはカズマにとっての一番がかなみではないということだ。 カズマが見ているものは、望んでいるものは、欲しているものは、自分の中にはない。 ただ休息の為の宿り木のような安息を、自分へと抱いてくれているだけ。 だが彼の本質はそこにはない。それ故に自分が彼を繋ぎとめておくということは出来ない。 それをかなみ自身が痛いほどに自覚できていた。 歳相応の独占欲と歳不相応の聡明さが相反し摩擦を生む。 その摩擦は、幼き彼女にとっては辛すぎるものだった。 分かっていたことだ。これは前々から薄々に自分でも思っていたことだ。 ただ今回のことで、漸くに表面上に浮き上がってきただけ。 いつまでも気づきたくは無かった、そんな事実だと言うだけだ。 「……寝よう」 考えていても辛くなるだけ、ならば考えない方がいい。 辛い事は寝て忘れるのが一番。それが逃避という行為と本質は同じだとしても、誰が今の彼女を責められようか。 彼女は眠る為に、夢を見る為に、静かに目を瞑る。 またあの夢を見られれば、夢の中の“あの人”を感じられれば、この苦しみが癒されるような気もした。 “あの人”の勇気が、今の自分には堪らなく恋しかった。 だからもう一度、あの不思議な夢の続きを見る為に、かなみは眠る。 今日の哀しさを明日には引っ張らぬように、また明日は明日でカズマに笑いかけることが出来るように。 そうする為に、今は夢を見る為に彼女は眠り続ける。 ………だが結局、彼女はこの夜、夢の続きを見ることは出来なかった。 時刻はそろそろ日付の更新をしようかという時間帯。 高町なのはまだ机の上の残務をこなしていた。 「ほらよ、お疲れさん」 そんな彼女の元にやって来てミネラルウォーターのペットボトルを放り投げてきたのはヴィータだった。 なのははそれを驚いてキャッチしながら、ヴィータの方へと振り向く。 「………ありがとう。でもヴィータちゃん、早く休まないと駄目だよ」 「その台詞、そっくりそのまま返すぜ。明日も朝から新人どもの訓練する気なんだろ? いい加減、休めよ。本当に倒れるぞ」 呆れたように、否、少し怒ったようにぶっきら棒にヴィータがそう言うのは、本当に彼女の事を気遣っているからだ。 手近な椅子に座りながら、こちらを見張るように見てくるのはなのはが早く仕事を終わらせるように待っているということなのだろう。 「それ別に急ぎのもんでもないんだろ? 明日にだって出来るんじゃないのか?」 実際、ヴィータの質問通り彼女がしている残業は残業とも呼べない本来ならば余分なものだ。どう考えても徹夜で仕上げようとするものでもない。 「ワーカーホリックはユーノやクロノだけで充分だろ。お前この頃働きすぎだ、ちゃんとマトモに寝てないだろ」 責めるように言ってくるヴィータの言葉になのはは苦笑を浮かべてはぐらかすだけだ。 だが実際ヴィータの言葉通り、なのははロクに休んでいないのも事実だ。何かと余分な仕事を持ってきては、遅くまで書類と睨めっこを続けている。 それで新人どもの訓練を継続して続け、ホーリーの業務もこなしているのだから働きすぎもいいところだ。 特に今日など未開発地区にまで外出をしていたという。ヴィータにはなのはが何を考えて行動しているのかサッパリ分からなかった。 ただ一つハッキリと分かることは、そろそろ無理矢理にでも彼女を休ませなければならないということだ。 「………ごめん、ヴィータちゃん。でも後ちょっとで終わるから」 「駄目だ。ソレあたしが代わりにやっといてやるから、お前は早く寝ろ」 「でも―――」 「でももヘチマもない。副隊長としての当然の進言だ、聞き分けろ」 こういう時の彼女は外見に似合わずどうにも大人びていて、その上で梃子でも動かぬ融通の利かぬ頑固さがある。 いくらなのはでも説得は不可能と判断したのか、彼女はやがて諦めたように溜め息を吐いた後に頷いた。 その様子がまるで昼間の自分たちの関係が逆転したようにも見え、ヴィータは少しだけ良い気分になったのは、彼女の中だけの秘密だ。 「分かったよ、ヴィータちゃん。私も今日は休む」 「それでいい。ちゃんと歯を磨いて寝ろよ」 「ヴィータちゃん、まるでお母さんみたいだよ」 十九歳の一児の母と見た目が小学生ほどの少女が交わすにしては奇妙な会話をしながら、なのはは言葉通り椅子から立ち上がり部屋の外へと歩き出す。 ふとその背中にヴィータが声をかけたのは、いったい何故だったのか。 「………なぁ、なのは。お前、外で何してたんだ?」 早く寝ろと促がしながら呼び止めていては意味が無い。それは充分に分かっていたはずなのに、ヴィータはどうしてもそれを聞いておきたかったのだ。 なのはは立ち止まってこちらへと振り向きながら、少しだけ微笑んだ。 「インナーの人たちのことがもっと知りたくて、会いに行ってたんだよ」 現地の人間との必要以上の接触をするのは、管理局員としては好ましいものではない。なのはの行動は職務を逸脱したものでないにしても、軽率と言えばそれまでだ。 だがエースオブエースとも呼ばれるベテランの局員であるなのはが、どうしてこの世界に肩入れしようとしているのかがヴィータにはよく分からなかった。 「………現地の住民との接触は、あまり好ましい行動じゃないぜ」 「うん。一人浮いてるのが明らかで、あまり調査にはならなかったよ」 苦笑と共に言ってきたなのはの言葉は、しかし全然懲りた様子もないものだった。 あまり規律には厳しい方ではない彼女にしても、悪びれた様子も無いというのは珍しい。 収穫がないという態度のわりには、どこか帰ってきてからのなのはは機嫌が良い。何かがあったと思ったのだがそれは何なのだろうか。 ヴィータがそんな疑問を当然のように抱いた時だった。 「………それと、またカズマ君と会ったんだ」 そんな驚くべき告白をなのはがしてきたのは。 カズマ。それがNP3228の事を指しているのはヴィータにも直ぐ分かった。 まさか彼女が自分たちの知らぬ間に、またあの男と接触していたとは思わずそれこそヴィータは反射的に椅子を蹴飛ばして立ち上がった。 「ちょっと待てよ! まさかまたアイツと戦ったのか!?」 前回の戦闘を見る限りでもリミッターを付けたままではかなり危ない相手だ。 そんなのとまた戦ってなのはが負傷を負っていないとも思えず、心配になって怪我の有無を確認しようとする。 だがそれを制するように彼女は静かに首を振ってくるだけだった。 「大丈夫、彼とは戦ってないよ。………少し、お話をしただけ」 そう言ってくるなのはだが、ヴィータにはとても彼女の言葉は信じられない。 当たり前だ、アレは直に会っていないにしろ映像で見た限りでも説得が通じるどころかそもそも話し合いというものに応じるような輩ではない。 だからこそ、ヴィータは直ぐには彼女の言葉が信じられず、露骨に疑う顔をした。 「あ、信じてないね。でも本当だよ、ヴィータちゃん。カズマ君は話せばちゃんと分かってくれる、ちょっと素直じゃないだけの男の子だよ」 ちょっとではなくてかなり、ついでに非常に乱暴という言葉も付け加えておけとカズマを良く知る者ならば言うことだろう。 どちらにせよ、思ってもみなかった彼女のカズマ擁護には、それこそヴィータが訳が分からないと思わず首を傾げても、それは無理からぬことだろう。 「………ってちょっと待て! アイツは犯罪者だろ!? ホーリーにとっての敵だろ!?」 思わずそう問い質すヴィータにしかしなのはは何故かその表情を曇らせる。 現地組織と協力している管理局員が、現地の犯罪者を庇い立てるような行動を取るのはいくらなんでも不味い。 それはヴィータが言わずとも、なのは自身が分かっているはずのことだ。 だがそれに対してなのはは、 「………ねぇ、ヴィータちゃん。ホーリーがしていることが、本当に正しいことだと思う?」 そんな前提すら揺さぶりかねないとんでもない質問を投げかけてきた。 劉鳳あたりが聞けば、まず間違いなく激怒するであろう問いだが、赴任直後のヴィータでも流石にそれに頷くことは出来ない。 ヴィータは基本的にどんな時でも出来る限りはなのはの味方だ。だがいくらなんでも今この瞬間においてなのはが何故そんな事を言ってくるのかが彼女には分からなかった。 「………おい、なのは。お前、何が言いたいんだよ………?」 「この大地に住んでいる人達には彼らなりの生き方がある。無理に本土の意向を押し付けて力で従わせようとするホーリーのやり方に、私は少し疑問を抱いてる」 「………でもそれは、あたし達が口を挟むことじゃないだろ。現地の世界の組織が秩序を保とうとするやり方に、管理局は介入する権利を持ってない」 郷に入れば郷に従え、管理局は管理世界にしろ管理外世界にしろ、余程の危険性が存在しない限り、それぞれの世界には干渉しないのが大前提だ。 自分たちはあくまでも天秤であり、秤自体を不用意に傾けることは許されない。 ホーリーの、本土のやり方がロストグラウンドに結果的に秩序を齎そうとしていると管理局が判断している以上は、局員がそれに異議を申し立てることは出来ない。 あくまで時空管理局とは次元世界の守護者であり、それぞれの世界そのものを守護しているわけではない。 そんな基本的なことは十年もずっと管理局員として働いてきたなのは自身がよく分かっているはずではないか。 「………なのは、分かってると思うけど此処は97管理外世界じゃない。似ているからって、あまり感情移入し過ぎない方がいい」 例えエースオブエースと言えど管理局の意向に逆らえば、それは背信行為だ。 この十年、彼女が築き上げてきた輝かしいキャリアに瑕が付くこともそうだが、それは同時に上司であり彼女の主である八神はやての経歴にさえも瑕を付けることになりかねない。 最もありえてはならない、想像するだけで忌まわしい未来だが、今のなのはの不可思議な言動を見る限りでは、本気で危惧しないわけにはいかなくなってくる。 だからこそヴィータはその未来を恐れる。 「でもヴィータちゃん、この大地の人達だって―――」 「分かった。その話は今度聞いてやる。………だから今日はもう休め、な」 彼女の言葉を遮って言い聞かすようにヴィータは言う。 彼女のその態度に、なのははそれこそ落胆したような、どこか寂しげな様子も顕に、もはや何も言わずに背を向けて退室していく。 その去り行く背中を見るのがあまりにも辛く、ヴィータは思わず目を逸らしていた。 なのはが退室した後、机の上に突っ伏すように顔を埋めながら、ヴィータは真剣に考えていた。 彼女はいったいどうしてしまったのかと、本当に大丈夫なのかと。 病み上がりの直後に未知の………けれどあまりにも故郷に似た世界での過酷な任務。 この所ずっと何かに悩んでいるような素振りも見せていたし、仕事の疲れからきっとあんな事を言ってしまったのだ。 悩みと疲れと郷愁から、なのはは少しばかり感情移入し過ぎているだけ。 きっとそうだ、そうに違いない。 はやてに報告は………駄目だ、彼女に余計な心配はかけられないし、なのはを疑っているかのような事もしたくはない。 それになのはを今回の任務から外すようなことになれば、上層部はその理由を問い質してくるに違いない。 まさかエースオブエースが時空管理局のやり方そのものに背信行為に近い考えを抱いていたから、などと報告できるわけがない。 そんなことが知られれば、いくらJS事件の功績が大きかろうと、なのはは査問を避けられなくなり、責任の追及ははやてや六課の後ろ盾にだって及ぶかもしれない。 そんなことになればもはや滅茶苦茶だ。自分たちが管理局で築いてきた十年が台無しになってしまう。 第一なのはは更迭されるだけで済めばいいが、彼女が犯罪者ということになったらどうなる? 誰が哀しむ? ユーノか? フェイトか? ヴィヴィオか? 皆が哀しむ。はやてや自分もだ。 親友を、主を、そんなことにさせるわけにはいかない。 だからこそ今夜の事は自分の胸の中にだけで留めておく、そうしなければならない。 主への忠誠と親友への友情からヴィータはそう決めた。 二人は自分が守る、守らなければならないのだ。 だからこそ――― 「なのはを誑かす様な奴は―――許さねえ」 NP3228、コイツだ。このカズマという男がなのはを誑かしているに違いない。 なのはがおかしいのはコイツと接触した後からだ。コイツが彼女に変な事を吹き込んだに違いない。 当初は好感を抱いてもよさそうな奴だと思ったが、この原因があの男にあるというのなら、その感情はそのまま逆転することになる。 ならばコイツは敵だ、自分たちの関係を、絆を脅かす最も忌むべき存在だ。 これ以上、もう二度となのはが誑かされる前にコイツの化けの皮を剥がしてなのはを正気に戻さなければならない。 それが出来るのは誰だ? なのはを守れるのは誰だ? 「………そんなの、あたししかいねえだろ」 此処にはやてはいない。フェイトはいない。シグナムもシャマルもザフィーラもいない。 十年来の仲間達で彼女を守れるのは自分だけだ。 他の誰でもない、八年前から高町なのはを守るのは鉄槌の騎士であるヴィータの役目だ。 故に――― 「あたしが守る。なのはは………あたしが守る」 その決意も顕に、改めてカズマ打倒をヴィータは誓った。 次回予告 第3話 桐生水守 何が正しき道であり、誰が正しき者なのか。 誤解と不和、疑心と迷いが渦巻く中で、 出会う彼女たちが信じるものとは何なのか。 理想と現実、その隔たりの先で、 少女が見つける答えとは。 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 前へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3148.html 次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3149.html